皆さま、こんにちは。初めまして。
東京で活動している認定セラピストの叶 紗央理(かない さおり)です。

初めてのコラムで何をお伝えしようか迷ったのですが、今回は今話題のあの幼稚園について、心理面からお話ししたいと思います。

日本人の心の癒し

私はXが好きで、ツイッター時代からよく見ていたのですが、8月の始めにある投稿が話題になりました。

投稿の内容は、オランダの野性アザラシ保護施設がYouTubeで、24時間リアルタイム配信している動画が可愛いから見てね、というものでした。
この時にアザラシ保護施設のことを『アザラシ幼稚園』と書いてあったことで、以降この名前で有名になっていきました。

私も早々にこの投稿を目にして、すぐに動画を見に行ったのですが、プールで泳ぐ子供のアザラシ達が可愛いらしく、無邪気に遊ぶ姿に癒されて、毎日見るようになりました。

このアザラシ保護施設は、オランダの北部フローニンゲン州にある、ピーテルブーレンアザラシセンターです。

病気や怪我を負ったり、孤児になった野性のアザラシを保護して、治療してリハビリを行い、元いた海に帰すという活動を行っている施設です。
YouTubeで24時間リアルタイム配信されているのは、リハビリ用のプールに設置されているカメラの映像です。

そこで泳いだり、遊んだりしている子供のアザラシ達の姿を、常時千人から多い時は2万人を超える人達が視聴していて、そのほとんどが日本人です。
(Xの投稿を発端に多くの日本人が押し寄せる前は、一日あたり10人程度しか配信を見る人がいなかったそうです!)
ライブ配信では自由にチャット欄でコメントができるのですが、ほとんどが日本語のコメントで埋まっています。

アザラシが垂直で立つように水中に浮かぶ姿は以前から『茶柱』と呼ばれていたらしいのですが、ピーテルブーレンアザラシセンター(アザラシ幼稚園)のライブ配信でも、立ち泳ぎしているアザラシが茶柱と呼ばれるようになって、それ以降、茶道の用語でアザラシや配信を見ている人達を表現するようになりました。
(施設にお魚代を寄付した人は千利休と呼ばれます)

学生時代は茶道部で部長を努めていた私は、チャットで飛び交うお茶に関連したコメントも楽しいです。

疲れた心を癒してくれるアザラシの作用とは

さて、このアザラシ幼稚園は、なぜここまで日本で大人気になったのでしょうか?

以前から日本ではアザラシが人気でしたね。
2002年、東京の多摩川に現れた迷子のアザラシは、タマちゃんと呼ばれて住民票を与えられるほど人気者になりました。

アザラシが人気になる理由の一つは、その可愛らしい外見でしょう。
まん丸な体に、丸い輪郭の顔とつぶらな瞳。特に真っ白でふわふわの毛に覆われたアザラシの赤ちゃんは天使のように可愛いですね。

この顔の特徴は、人間と動物の赤ちゃんに共通するもので、ベビースキーマと呼ばれています。その姿を見ると、私達は自然と守ってあげたい気持ちになります。
か弱くて一人では生きていけない赤ちゃん達は、その外見を以て、親の庇護欲を掻き立て自分の身を守っているのです。

そして私達はその可愛らしい姿を見ているだけでも、幸せホルモンのオキシトシンが分泌されるため、リラックスを促されてストレスが軽減されます。

これらが、何度でもアザラシを見に行きたくなる理由でしょう。
見ているだけで私達も癒しになっているのです。

心を癒して回復に向かうために必要なこと

アザラシ幼稚園を熱心に視聴して支援しているのは、主に疲れたサラリーマンであると言われています。
そこで、帰宅後にアザラシを見ることが日課になった、会社員のAさんについてお話しします。

中堅社員のAさんは、あるプロジェクトのチームリーダーとして数人の部下をまとめています。
プロジェクトの規模の割にはメンバーが少ないため、リーダーのAさんには残業が続いていました。
そのAさんのチームに最近、他部署から異動してきたB子さんが配属されました。

一通り業務の引継ぎが終わって、B子さんは一人でも仕事ができるようになったのですが、これまで教えた事で対応できるような業務でも、心配性のB子さんは逐一Aさんに確認してきます。
Aさんは聞かれる度に丁寧に答えていたのですが、B子さんはもう少し自分で確認してから聞いてしてほしいと思っていました。

何か月たってもB子さんのやり方は変わらず、少しずつチーム全体の仕事も溜まっていきました。
Aさんは上司に相談したり、他のメンバーにフォローを頼んだりしていましたが、更に忙しくなったことで遂に業務が回らなくなってしまいました。

そこでAさんは、B子さんの仕事の一部を他のメンバーに任せようとしましたが、また聞かれて教えるよりも自分がやった方が早いと思い、B子さんの仕事も引き受けるようになりました。

Aさんは内心、B子さんは自分の役割を果たしていないと思って、不満や怒りを感じていましたが、それを直接B子さんには伝えませんでした。こうしてAさんの残業は更に増えていきました。

そんなAさんの気分転換は、好きなスポーツを見たり、音楽を聴いたりすることでしたが、最近は可愛いアザラシたちを見ることが日課になっています。
帰宅後に癒しを得ることで、翌日の仕事を頑張ることが出来たのです。

今回のように、Aさんが一人で沢山の仕事を抱え込んで帰れなくなるのは、これが初めてではありませんでした。
仕事だけでなく他の場面でも、皆が抱えきれないものを、Aさんが引き受けて抱え込むということが少なくありませんでした。
そして不満や怒りを感じて、その場を去ったり転職することを繰り返していました。

このようなAさんにとっては、可愛い動物を見ることで得られる癒しは一時的なもので、対症療法にしかなっていないのです。

Aさんの問題点は、今回のようにAさん一人が仕事を抱え込んで、自分だけ損な役回りに入ってしまうことです。
そしてAさんは、皆が抱えきれないもの、つまり不用なもの、要らないものを引き受ける一種のゴミ箱のような役割にも入っていました。

遡ってみると、Aさんはずっと昔から、子供の頃からこの役割を引き受けていました。
心配性で不安が強い母親を支えるため、幼いAさん一人が、家族に生じる様々なトラブルを引き受けて、母親の愚痴の聞き役にもなっていたのです。

この幼少期に身に着けた、『役割』を変えることは容易ではありません。
無意識ですがAさんも、多くの場面でこの役割を繰り返していました。

Aさんがこれに問題意識を感じて、解決したいと思った時、最初に必要なことはAさん自身が、自分の心に何が起こっているのか?を知ることです。
同じような場面で毎回行き詰まる場合は、何らかの心理的な原因が潜んでいる事が多いからです。

そして、一見すると大変な状況のAさんですが、この状況にいることで得られるものがありました。
本人は無自覚でしたが、Aさんには自分を責めたり否定する癖がありました。そのようなAさんにとって、チームの役に立つことは、自分の価値や存在意義を感じられて、周囲からは承認してもらえるというメリットがあったのです。

このような自分の現状を知ることは、一人ではとても難しいです。

リトリーブサイコセラピーでは、電話カウンセリングや対面セラピーを通して、お悩みや問題の解決に向けて、サポートすることが可能です。

自分の心を知るために、ぜひご相談ください。全力でサポート致します。


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