こんにちは。東京で活動しています、福原佳奈です。
【人は、人の中で育ち、傷つき、癒され、そして成長していく】——。
この言葉は、私自身リトリーブサイコセラピーでの “人との関わり”の中で、確かにそうだと気づけたことの一つです。
誰かの優しさに救われた日。 誰かの何気ない一言に心が沈んだ日。 誰かに受け止めてもらって、泣くことができた日。
そんな“人との関わりの中でしか生まれない感情”が、 私たちを育ててきました。
ところが今の時代は、AIで答えが手に入り、 スマホで何でも分かる便利さの反面、 直接の対話や、感情のやりとりが目に見えて減りつつあります。
もし人との関わりが減ってしまったら、 私たちの心にはどんな影響が起こるのでしょうか?
今日はそのことについて書きたいと思います。

●「人に会わなくても何とかなる時代」に潜む落とし穴
コロナ禍をきっかけに、私たちの生活は一気にオンライン化しました。
買い物も、相談も、情報収集も、 AIやネットを通せばほとんど完結します。
便利でラク。 だけど、気づかないうちに “人との触れあい” が抜け落ちていきます。
人は本来、誰かの表情、声のトーン、間の取り方、 匂いや温度——そうした膨大な情報を通じて安心感を得ています。
オンラインやAIはとても優秀ですが、 この「生身の温度」を完全に再現することはできません。
その結果、
・なんとなく孤独 ・いつも緊張が抜けない ・他人が怖い ・表面的なやり取りしかできない ・自分の気持ちが分からなくなる
といった“静かな生きづらさ”が増えています。
●情報は溢れているのに、心は満たされない理由
いまの時代、私たちは欲しい情報を一瞬で手に入れられます。
悩みを検索すれば答えらしき文章が出てきて、 AIに聞けば丁寧に説明してくれる。
だけど—— 「安心」はなかなか満たされません。
なぜなら、 安心は “人との関係” の中で育つものだから。
情報だけでは、心の穴を埋めることはできないのです。
さらにもう一つ、 大きな問題が生まれています。
それが エコーチェンバー と呼ばれる現象です。
●エコーチェンバーが私たちの心を蝕む
AI・SNS時代になるほど、 私たちは自分と似た意見だけが集まる“安全な空間”に留まりやすくなります。
ここには、心理的な落とし穴がいくつも潜んでいます。
① 思い込みが強化される 同じ意見ばかりが返ってくるため、 「これが正しい」「こうに違いない」 と認知が偏りやすくなります。
② 感情が不安定になる 不安・怒り・焦りにつながる情報が増幅され、 気持ちが揺さぶられやすくなります。
③ 対話スキルが低下する 異なる意見に触れないため、 現実のコミュニケーションで衝突しやすくなる。
④ 他者理解ができなくなる 価値観の違いに触れる経験が減ることで、 「どうしてこの人はこう考えるの?」 が分からなくなる。
⑤ 孤立感が深まる 安全な“自分の世界”にこもるほど、 現実のつながりが薄れ、孤独を感じやすくなる。
⑥ 依存が進みやすい 安心できる情報ばかりを求め、 ネットやAIに頼りすぎる状態になりやすい。
★心が育つのは「ゆっくり・じっくり・誰かと一緒に」
人は、誰かに話を聞いてもらい、 否定されず気持ちを受け止めてもらうことで、
「私はここにいていいんだ」
という安心感を取り戻していきます。
便利さに慣れすぎると、 この“ゆっくり育つ安心感”を感じる時間が失われてしまいます。
たとえば、
・言葉に詰まる沈黙 ・相手が考える間 ・うまく伝わらないもどかしさ ・気持ちが分かち合えた瞬間の温かさ
こうした体験は、デジタルでは得られません。
でも、この「面倒だけど大切な時間」こそが、 私たちの心を育てているのです。
■結論
AIが進化し、情報があふれるほど、 私たちの心は“人と人のあたたかさ”を必要としています。
疲れることもあれば、面倒に感じる瞬間もある。 それでも、誰かと笑い合ったり、想いを分かち合ったりする中で、 私たちは安心を取り戻し、ゆっくり成長していきます。
もし今、 「人が苦手」 「でも誰かとつながりたい」 そんな揺れる気持ちを抱えているなら、その感覚はとても自然です。
心が寂しいとき、 温かい居場所が欲しいときは、 ひとりで抱えず少しだけ誰かに手を伸ばしてみてください。
人は、人の中で育ち、癒され、成長していく存在です。 あなたの心もあなたのペースで、 ゆっくり温かい関わりの中で育てていけたらいいですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
コラム担当者の紹介:協会認定セラピスト 【東京】福原佳奈


