こんにちは 東京・千葉で活動しております心理セラピストの野沢ゆりこです。

7月に入り今年も折り返しですね。私にとって今年は、どうやら波乱万丈な年のようです。少し前まで私は、いい歳になった、子供も自立してこれからは夫と二人で平穏で幸せな暮らしができると思っていました。ですがそんな思いが吹っ飛んでしまうような出来事が起こりました。娘が離婚を決め、まだ幼い孫と2匹の猫を連れて戻ってきたのです。
突然の出来事に動揺し、娘と孫の今後のことや自分達のこれからを考えると、不安になり気持ちが落ち込んでいきました。
元気いっぱいの孫の世話、買い物や洗濯、食事を作る仕事が増えることになりました。生活は一変し、のんびりできるどころか毎日がせわしなく忙しくなったのです。

 最近読んで感銘を受けた本で、脳の特性について書かれた心理学者の本なのですが、その本には、「幸せは続かないように出来ている。なぜなら永遠に幸せになってしまったら、人間は次のモチベーションが生まれず行動しなくなってしまうから」とありました。
私は本に書かれていた「幸せは続かない」という現実に直面したのです。
今回は、感銘を受けた本「メンタル脳」(アンデシュ・ハンセン著、新潮新書)を参考に、脳の特性について書いてみたいと思います。

脳は生きのびることが最優先

 私たちはヘビやクモを見るとゾッとしますよね。殆どの人が怖いと感じます。
これには理由があって、私たちの祖先は皆、元狩猟採集民なのです。木の上に成った果物を摂ったりして生活していたのです。その頃はヘビやクモは命を脅かす存在でした。脳はその過酷な時代を生きのびるため、そして子孫を残すために進化したのですが、実は脳はその頃から変わっていないそうです。
現代はヘビやクモで命を落とすことは殆どありません。それよりも車や煙草、長時間座ったままでいることの方が命を脅かすのですが、脳はそれがわかりません。
脳は私たちを取り巻く時代が変わったことがわからないのです。
ですから脳は今でも生きのびることが最優先です。気分よく幸せに暮らすために働いているわけではないのです。

脳は生きのびるための道具として感情(恐怖、不安)を使う

脳は生きのびるためにあらゆる危険を遠ざけようとします。
その為に使われるのが「感情」です。それもハッピーな感情や心地良い感情よりも、恐怖や不安といった感情を使うのです。
引きこもらせたければ落ち込ませる。積極的に行動させたかったら万能感を抱かせ、私には出来る!と思わせるのです。
実際に危険な場合でも、行動したかったら、自分だけは大丈夫、今回だけは大丈夫、なぜなら○○だし・・・と、都合のいい理由を見つけ出して行動に移したりします。
ところで不安とストレスの違いは何でしょう?
「ああ、明日は仕事で大事な商談がある。失敗したらどうしよう」このような時に感じるのが不安です。一方で「昨日は仕事の商談で失敗してしまった!ああ、これからどうしよう!」このように実際に起こってしまったことに対して、何かしらの危険を感じるのがストレスです。
不安はこれから起こりそうなことに対しての「事前のストレス」というわけです。
私たちが不安を感じる時、危険かもしれないとストレスシステムが起動します。
脳の扁桃体が警告するのです。「何かがおかしい」と知らせるわけです。
たとえその不安の原因が漠然としたもの、ありえないようなものだったとしても、脳は生きのびるためなら全力を尽くして働き危険を知らせます。
どんな時に不安を感じるかは人それぞれです。いつも不安で心休まらない人もいるかもしれません。急に激しい不安に襲われる、特定の場所や環境で不安になる人もいます。
乗っている飛行機が落ちるかも。明日地震が起きるかもと恐ろしいことが次々に頭に浮かぶ人もいます。
ですが大切なことは、不安というものは空腹や疲労と同じように人間にとって自然な感情であるということです。
不安を感じる自分をダメだと思わず、不安でもいいと自分を受け入れて、扁桃体が危険を知らせているのだな、それも狩猟採集民の頃のままでね、と思って上手くつきあっていけるといいですね。

脳は「忘れたい記憶」ほど重要

 人間の脳には図書館1万1000軒分の情報が入るようになっているそうです。
ものすごい量の情報を蓄えることができるらしいのですが、脳は寝ている間にアップデートを繰り返し、これは要る、これは要らないと振り分けて、必要なものは残し、必要のない情報は忘れるように出来ています。それは何の為かというと、必要な時にすぐに取り出せるようにするためです。
ごちゃごちゃの部屋と同じで、要らないものがたくさんある部屋だと必要な時に必要なものがすぐに探し出せないのと同じです。
どんな情報が必要なのかというと、「生きのびる為に重要だ」と思われる情報(記憶)です。中でも「危険や脅威」といった感情に結びついた情報(記憶)なのです。
脳にとっては、トラウマとして残ってしまうようなつらい記憶、怖い記憶ほど忘れてはいけない記憶なのです。
忘れてしまったら命の危険にさらされる。もう二度と起きてはならないと脳は捉えるのです。こんな風に脳は少々お世話が過ぎるのです。
つらい記憶を何度も何度も思い出すと、心がつらくなり疲弊してしまいますが、こんな時は脳が生きのびようとしていると考えてみるといいですね。

記憶は取り出すことで変化する

 つらい記憶をなかったことにして忘れようとする人がいます。そもそもそんな事実さえなかったのだと考えたり、記憶にフタをして別のことをしようとしたり、ポジティブ変換しようとする人もいます。
ですがそうすればする程忘れたい記憶ほど忘れられず、石のように固まってしまいます。
現実否認や抑圧すればする程、辛さ、苦しさ、怖さ、悲しみは無くなるどころか増々膨らんでしまうのです。
ですから、つらい記憶ほど取り出すことです。なぜなら記憶は取り出せば変化するからです。
記憶というのはユーチューブのように毎回同じように再生されるものではなく、ウィキペディアみたいに更新されていくものだからです。
では、取り出すとは具体的にどうするのかというと、人に話す、ノートに書き出す、セラピーを受けるなどです。ただ人に話す時は慎重に人を選ぶことが大切です。

リトリーブサイコセラピーは、安心安全の場で、クライアントさんの辛い記憶を取り出し、セラピストが伴走して未完了の感情を完了させ、脳にとっての「命を脅かすことのない記憶」、「忘れてもいい記憶」に書き換えるということをしているのです。

脳は「幸せ」は短い方がいい

私たちは楽しい時、好きな人と一緒にいる時などに、この幸せがずっと続いたらいいのに、この満足感が永遠だったらいいのに、どうして私の幸せは長続きしないのだろう?

このように感じたことはありませんか?

でも私たちの身体はそのように出来ていません。脳は「幸せ」は短い方が都合がいいのです。

例えば、何か欲しい物を買って喜びや幸せ、満足を感じたとしても、またすぐに人が持っている別の物が欲しくなります。お金が手に入っても、今度はもっとたくさん欲しいと思います。

このように幸せや喜び、満足感はすぐに消えるように出来ているのです。

なぜなのかというと、ずっと幸せなまま、ずっと満足したままだったら、次の目標やそれに向かってのモチベーションが生まれないからです。

狩猟採集民の頃から変わっていない脳は、次のモチベーションを持てずに、木に登らずに果物を採らなくなってしまったら、生きのびることができないと捉えるからです。

私たちは幸せになることをゴールにして頑張るということをしがちです。でもそもそも幸せがすぐに消えてしまうのならば、幸せになることをゴールにするのではなく、その道のり、プロセスの方を大事にして生きる方がいいと思うのです。

人生のリスタート?

 私はリトリーブサイコセラピーに出会ってから現在までの間、いい時間を過ごし幸せでした。自分に集中することができましたし、過去を癒し仲間と一緒にセラピーを学び、セラピストになったのです。この幸せが永遠に続くように思っていたし、そう願ってもいたのですが、娘と孫との生活が突然始まったことで、自由を奪われたような、行動を制限されたような気がして幸せが消えてしまったと感じたのです。

ですがよく考えてみると、突然のこの出来事は、次の新たな人生が始まったということであり、新しい目標とそれに伴うモチベーションが必要になったのだと思います。

私の脳が私を生きのびさせるために、そう働いたのだと思うのです。

人はこのように、出来事に対して納得のいく解釈をつけたいものなのかもしれません。

今は元気を取り戻し、生活のペースも掴めてきました。

私は猫好きではなかったのですが、猫たちとの生活がやってきて、最初は戸惑ったものの、今は悪くないと感じています。

これからどう生きるか?次の目標をどうするかはゆっくりと考えていこうと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

コラム担当者の紹介:協会推薦セラピスト 【千葉県】野沢ゆりこ

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